大谷が6月17日に正式に最高裁判事に就任すると、4紙は続報を打った。彼が最高裁内で就任記者会見を開いたからだ。翌日18日付朝刊で読売と日経、同日付夕刊で朝日が会見内容を伝えている。そろってベタ記事で、やはり中面に掲載していた。毎日は他紙より5日遅れの23日付朝刊の中面で追いかけた。
さすがに最高裁長官になると、紙面上の扱いはやや大きくなる。現在の長官である竹崎博允が新長官に内定した時も、主要紙は1面ニュースとして伝えている。だが、アメリカの新聞が最高裁判事の人事でも大騒ぎするのと比べると、見劣りする。就任記者会見の様子など、司法記者クラブ内での発表を処理するだけで完成するような記事が多いのだ。
リーク依存型取材では裁判官報道は価値がない
裁判官報道をめぐり日米で雲泥の差が出るのは、最高裁裁判官の人事にとどまらない。前回の記事(「村上ファンド、ライブドア事件報道を検証」でも書いたように、刑事裁判などの報道でも大きな違いが出る。なぜなのか。
裁判所を取材しても、「最高裁は~裁判で合憲判決を出す方針で一致し、週明けにも発表する」「東京地裁は~事件で検察側の主張を認め、あすにも被告に有罪を言い渡す」といったニュースを書けない。裁判官が判決情報を事前にリークすることはないから、いずれ発表になるニュースを先取りする「発表先取り型」が機能しない。
リーク依存型の特ダネ競争を展開する記者にしてみれば、取材対象として裁判官の利用価値は低いわけだ。逆に言えば、遠慮なく裁判官について書いてもかまわないはずだ。裁判所に出入り禁止にされても、「発表先取り型」で他紙に抜かれる心配はないのだから。
にもかかわらず裁判官報道は乏しい。最高裁裁判官が大きな写真入りで主要紙の1面トップを飾ることなどほとんどないため、最高裁判事はもとより最高裁長官の名前すら知らない人が多い。司法権の最高責任者であり、行政権の最高責任者である内閣総理大臣と同じ報酬をもらっているのに、である。
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